なでしこの挑戦――名門アーセナルの再建を担う大野と近賀

カテゴリ:日本代表

松澤浩三

2014年03月21日

捲土重来を期す盟主が白羽の矢を立てたのが――。

超名門アーセナルへの入団は、日本女子サッカーにとって歴史的な出来事と言っても過言ではないだろう。大野(左)と近賀(右)の挑戦から目が離せない。 (C) Getty Images

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 イングランドのビッグクラブが、女子サッカーに力を入れはじめているのをご存じだろうか。

 4月16日に開幕する2014年シーズンから、イングランド女子スーパーリーグ(WSL)に加盟するマンチェスター・シティ・レディース(以下シティ)が、イングランド代表を中心に7人の有力選手を獲得する大型補強を断行すれば、チェルシー・レディースも昨年の大儀見優季に続き、今年2月、なでしこリーグでプレーし、日本でもお馴染みだった韓国代表のエース、チ・ソヨンを獲得。2人のアジアン・スターをはじめ、さらに代表クラスの選手を複数集めて上位進出を狙う。

 この2チームが目標としているのが、昨シーズンのWSLを制したリバプール・レディースだ。それ以前の2シーズンは最下位に沈みながら、陣容の大刷新で戴冠を果たしたその成功の再現を目論む。リバプールは一昨シーズン終了後に10人の選手を放出する一方で、ファラ・ウィリアムスなど代表クラスの実力者を中心に合計16人の新戦力を獲得し、チーム力の大幅アップを実現した。その背景には、独立採算での運営から、正式にリバプールFCの傘下に入った組織改編があった。

 シティ、チェルシー、そしてリバプールが新興勢力だとすれば、老舗の名門がアーセナル・レディースだ。過去に7連覇を含む最多12回のリーグ優勝を誇り、女子チャンピオンズ・リーグ(CL)をはじめ40以上のタイトルを、1987年のクラブ創設以来獲得している。昨シーズンは女子FAカップと女子リーグカップの2冠を制した。

 もっとも、WSLでは大型補強を実行したリバプールの後塵を拝する3位に終わり、シーズン終了後には8人もの選手がチームを去った。ケイティ・チャップマンがチェルシーに、ジェマ・デービーソンがリバプールに、さらにキャプテンのステフ・ホートンはシティに奪われた。アメリカへと渡ったのは、13年シーズンのリーグMVP(PFA=プロ選手協会の選出)に輝いたキム・リトルだ。ケリー・スミス、レイチェル・ヤンキーという女子サッカー界をリードしてきたベテラン2人が健在とはいえ、戦力を大きく落としたのは間違いない。

 骨抜きにされたイングランド女子サッカー界の“盟主”が、捲土重来を期して白羽の矢を立てたのが、なでしこジャパンの主力、FWの大野忍とDFの近賀ゆかりである。

 2月の入団会見で、近賀は地元メディアにこう語った。
「日本人選手として、アーセナルのシャツを身に着けるというのは特大の意味を持つ」
 この言葉通り、今回の移籍で日本の女子サッカーの歴史に新たな1ページが刻まれたと言っても過言ではないだろう。
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