【連載】小宮良之の『日本サッカー兵法書』 其の三十八「ストライカー依存」

カテゴリ:特集

小宮良之

2015年10月01日

2部を生き抜くには、ストライカーが戦術の基本となるケースが多い。

アトレティコ・マドリーなどでプレー歴のあるB・バストン。昨季のレアル・サラゴサで23ゴールと爆発し、今季からエイバルへ加入した。(C)Getty Images

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 かつてFC東京やC大阪などでも采配を振るったランコ・ポポヴィッチ率いるレアル・サラゴサは、リーガ・エスパニョーラの2部に在籍している。今シーズンは6節終了時点で1勝2敗3分けで17位(22チーム中19位以下が降格)。1部昇格を信じる本拠地ロマレーダのファンは不満を露わにし、すでに監督解任の分水嶺に近付きつつある。
 
 しかし実のところ、この苦境は開幕前から想定できていた。
 
 昨季のサラゴサの総得点は61。ポポヴィッチが採用した攻撃的フットボールによって、1部昇格プレーオフ参入の6位に入った(プレーオフでは最後にラス・パルマスに敗れ、悲願の昇格はならず)。エースのボルハ・バストンが23得点、ウィリアン・ジョゼが10得点、エルディン・ハジッチが8得点、ハイメ・ロメロが7得点。攻撃力が拠りどころだった。
 
 ところが、今季になって財政的に苦しいクラブは3人のFW、ひとりの攻撃的MFを次々に放出。50得点のマイナス(ふたりのMFの2点を含めて)という有様だ。一方で、ふた桁以上取っているアタッカーをひとりも補強できていない。
 
 その結果、6試合でわずか5得点。日本人MF、長谷川アーリアジャスールをポポヴィッチの肝いりで手に入れているが、得点力不足は解消できないだろう。なぜなら、長谷川はゴールゲッターではないからだ。
 
 2部リーグというのは、どこの国であっても多かれ少なかれひとりのゴールゲッターにかかる比重が大きくなる。
 
「ポイントゲッターがいれば、昇格できる」
 
 そこまで楽観的、短絡的な式は成り立たないとは言え、他のポジションと比べた場合、その存在価値は圧倒的に高い。なぜなら2部リーグは選手の質が不揃いであり、1部よりも必然的にミスが多発し、試合は拮抗し、カオスな状況が常態化しているからだ。
 
 各選手の力量に大きな波がある。そうした不安定なチーム状況では、守備の確立やポゼッション戦術の完成はほとんど不可能に近い。“優れたゴールゲッターが相手のミスを見逃さず、ゴールネットに叩き込む”というのが最善の戦術策。結果的に2部を生き抜くには、ストライカーが戦術の基本となるケースが多いのだ。
 
 リーガ・エスパニョーラも例に漏れず、今季1部に昇格したベティス、ラス・パルマスは得点ランキングで1、2位のルーベン・カストロ、アラウホのふたりを擁していた。
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