ドゥンガ・セレソンに明るい未来は描けない。
脈々と受け継がれる伝統芸や老舗の味は、変わってないようで進化している。
例えば、300年の歴史を誇る和菓子屋も、創業当時の味とまったく同じではないはずだ。そのつど新しいアイデアが持ち込まれ、時代に即した商品に少しずつ “姿”を変えてきたからこそ、人々に長く愛され、生き抜いてこられたに違いない。現状に甘んじ、そうした努力を怠った時に衰退は始まり、やがて淘汰されるのだ。
サッカー大国ブラジルはいま、大きな転換期を迎えている。
自国開催のワールドカップでドイツに1-7という歴史的敗戦を喫してから約2年。コパ・アメリカ・センテナリオに臨んだセレソンは、グループステージでまさかの敗退を喫し、メジャートーナメントでまたしても国民に失望を与えた。
引導を渡されたペルー戦の失点は、たしかに明らかなハンドを見逃される不可解な判定だった。とはいえ、早期敗退に至った最大の理由は、誤審ではないだろう。
ドゥンガ・セレソンに、もはや明るい未来は描けない。
2014年7月22日に前任のルイス・フェリペ・スコラーリから指揮を引き継いで以降、ドゥンガがセレソンにもたらしたプラスはなにか。正直、思い浮かばない。
ドゥンガに託された仕事の一つが、各ポジションの世代交代を進めることだった。しかし彼は、MLSで余生を過ごすカカや、36歳のリカルド・オリベイラといった大ベテランを定期的に呼び寄せてきた。右サイドバックのレギュラーは相変わらずダニエウ・アウベスが務めているし、CBの軸は31歳のミランダだ。
もちろん、同時に結果が求められる以上、ある程度は仕方のないことだ。しかし、優勝を期待された15年のコパ・アメリカはベスト8で散り、16年ワールドカップ予選は6節を終えて6位(5位以上が突破)に沈む有り様。そして、今回のグループステージ敗退だ。若手に貴重な経験を積ませてきたのなら、また話は別だった。
たしかに今大会は、“ネイマール二世”の呼び声高いガブリエウをはじめ、マルキーニョスやカゼミーロなど有望株を積極的に起用した。ただ、就任当初から勇気を持って才能ある若手を軸に据え、経験を積ませていれば、彼らはもっと決定的な違いを作り出していたのではないか。
マンマネジメントの手腕にも、疑問を抱かざるを得ない。15年のコパ・アメリカ以降、メンバーリストから名前が消えたのがチアゴ・シウバだ。あの大会で確執が生じ、修復不可能な関係に至ったというのが、取り沙汰されている理由である。
ドゥンガと折り合いの悪いマルセロも、昨年10月のチリ戦を最後にセレソンから遠ざかっている。ともに世界最高水準のタレントだ。
規律はたしかに重要ながら、一方で卓越しているとは言えない人心掌握術や求心力の低さを指摘せざるを得ない。
メンバー選考、ディフェンス重視の戦術など、すべてにおいて保守的な指揮官は、攻撃サッカーで魅了してきた伝統国の再建を託すには不適格な人物だ。
解任に踏み切れば、たしかに一からの出直しだ。時間と労力がかかる。とはいえ、決断が遅れれば取り返しのつかない事態を招く危険もあるだろう。
CBF(ブラジル・サッカー連盟)は、早急に新監督人事に取り掛かるべきだ。サッカー王国の伝統を、この先も守り抜いて行くために――。
例えば、300年の歴史を誇る和菓子屋も、創業当時の味とまったく同じではないはずだ。そのつど新しいアイデアが持ち込まれ、時代に即した商品に少しずつ “姿”を変えてきたからこそ、人々に長く愛され、生き抜いてこられたに違いない。現状に甘んじ、そうした努力を怠った時に衰退は始まり、やがて淘汰されるのだ。
サッカー大国ブラジルはいま、大きな転換期を迎えている。
自国開催のワールドカップでドイツに1-7という歴史的敗戦を喫してから約2年。コパ・アメリカ・センテナリオに臨んだセレソンは、グループステージでまさかの敗退を喫し、メジャートーナメントでまたしても国民に失望を与えた。
引導を渡されたペルー戦の失点は、たしかに明らかなハンドを見逃される不可解な判定だった。とはいえ、早期敗退に至った最大の理由は、誤審ではないだろう。
ドゥンガ・セレソンに、もはや明るい未来は描けない。
2014年7月22日に前任のルイス・フェリペ・スコラーリから指揮を引き継いで以降、ドゥンガがセレソンにもたらしたプラスはなにか。正直、思い浮かばない。
ドゥンガに託された仕事の一つが、各ポジションの世代交代を進めることだった。しかし彼は、MLSで余生を過ごすカカや、36歳のリカルド・オリベイラといった大ベテランを定期的に呼び寄せてきた。右サイドバックのレギュラーは相変わらずダニエウ・アウベスが務めているし、CBの軸は31歳のミランダだ。
もちろん、同時に結果が求められる以上、ある程度は仕方のないことだ。しかし、優勝を期待された15年のコパ・アメリカはベスト8で散り、16年ワールドカップ予選は6節を終えて6位(5位以上が突破)に沈む有り様。そして、今回のグループステージ敗退だ。若手に貴重な経験を積ませてきたのなら、また話は別だった。
たしかに今大会は、“ネイマール二世”の呼び声高いガブリエウをはじめ、マルキーニョスやカゼミーロなど有望株を積極的に起用した。ただ、就任当初から勇気を持って才能ある若手を軸に据え、経験を積ませていれば、彼らはもっと決定的な違いを作り出していたのではないか。
マンマネジメントの手腕にも、疑問を抱かざるを得ない。15年のコパ・アメリカ以降、メンバーリストから名前が消えたのがチアゴ・シウバだ。あの大会で確執が生じ、修復不可能な関係に至ったというのが、取り沙汰されている理由である。
ドゥンガと折り合いの悪いマルセロも、昨年10月のチリ戦を最後にセレソンから遠ざかっている。ともに世界最高水準のタレントだ。
規律はたしかに重要ながら、一方で卓越しているとは言えない人心掌握術や求心力の低さを指摘せざるを得ない。
メンバー選考、ディフェンス重視の戦術など、すべてにおいて保守的な指揮官は、攻撃サッカーで魅了してきた伝統国の再建を託すには不適格な人物だ。
解任に踏み切れば、たしかに一からの出直しだ。時間と労力がかかる。とはいえ、決断が遅れれば取り返しのつかない事態を招く危険もあるだろう。
CBF(ブラジル・サッカー連盟)は、早急に新監督人事に取り掛かるべきだ。サッカー王国の伝統を、この先も守り抜いて行くために――。