三菱養和ユースの中村敬斗が抱くシュートに対するマニアックなこだわり。
チーム結成以来、森山佳郎監督がU-16日本代表の選手たちに口を酸っぱくして言い続けていることがある。
「プロで食っていくための“武器”を持て」
U-16年代というのは通過点であり、彼らが大人になっていくための階段のひとつ。その過程で「俺はこれだったら誰にも負けない」と胸を張れるものを持てるかどうか。彼らが将来、世界の舞台で戦っていくためにも、その意識を持つように指導してきた。
チームのエース格にまで成長してきたFW中村敬斗(三菱養和ユース)について言えば、それは分かりやすく「シュート」ということになる。指揮官は名門クラブに所属する若武者をこんな言葉で評価する。
「(中村は)オフ・ザ・ボールのところ、ボールを受ける前のアクションはまだまだ足りない部分もあるが、シュート力に関しては大人の中に入れても通用する。右足で打てばかなりの威力を持っている」
元より足もとの技術は高く、ボールを持てば何かやってくれそうな期待感のある選手ではある。それが今年に入ってからは目の覚めるようなシュートを決めるシーンが目に見えて増加し、シュート練習を観ていても技術的な進歩が目覚ましい。シュートに対するマニアックなこだわりは「あの場面は力の踏ん張り方が間違っていた」「今日はミリ単位のズレがあった」なんてコメントが出てくる辺りからもよく分かる。
インステップでの強打はもちろん、巻いて打つこともあれば、コンパクトな振りでGKをズラすこともある。強いシュートが打てる選手はそれに溺れてバリエーションが少なくなりがちだが、中村はワイドレンジシューターでありながら、シュートバリエーション自体も多いという珍しいタイプだ。
シュートに自信があるゆえに、変に慌ててミスをすることも少ない。ヘディングを含めてクロスに合わせるシュートがもっと上手くなれば、より怖さが出るはずで、その点はこれからの“伸びしろ”と言えるかもしれない。
カットインしての右足シュートという絶対的な武器があるゆえに、FWでプレーする時も左に流れることが多い。それならばということで、左MFでの起用も増えていて、これもなかなかハマってきた。本人も「体力にも自信ありますし、持ったらスルーパスも出せるし、カットインもできる、得意なところを出せるポジション」と、このポジションの役割をしっかり消化している。
果たしてこのストライカーは、勝負の懸かる国際大会でどれだけのクオリティを見せてくれるのか。日本のことを研究するチームも出てくるはずで、「必殺の右」を封殺にかかられた時に、それを上回る「武器」を出せるかどうか。
2年後には争奪戦必至の目玉タレントとして早くもJクラブのスカウト陣からチェックを受ける逸材が、その真価と進化を問われることになる。
取材・文:川端暁彦(フリーライター)
「プロで食っていくための“武器”を持て」
U-16年代というのは通過点であり、彼らが大人になっていくための階段のひとつ。その過程で「俺はこれだったら誰にも負けない」と胸を張れるものを持てるかどうか。彼らが将来、世界の舞台で戦っていくためにも、その意識を持つように指導してきた。
チームのエース格にまで成長してきたFW中村敬斗(三菱養和ユース)について言えば、それは分かりやすく「シュート」ということになる。指揮官は名門クラブに所属する若武者をこんな言葉で評価する。
「(中村は)オフ・ザ・ボールのところ、ボールを受ける前のアクションはまだまだ足りない部分もあるが、シュート力に関しては大人の中に入れても通用する。右足で打てばかなりの威力を持っている」
元より足もとの技術は高く、ボールを持てば何かやってくれそうな期待感のある選手ではある。それが今年に入ってからは目の覚めるようなシュートを決めるシーンが目に見えて増加し、シュート練習を観ていても技術的な進歩が目覚ましい。シュートに対するマニアックなこだわりは「あの場面は力の踏ん張り方が間違っていた」「今日はミリ単位のズレがあった」なんてコメントが出てくる辺りからもよく分かる。
インステップでの強打はもちろん、巻いて打つこともあれば、コンパクトな振りでGKをズラすこともある。強いシュートが打てる選手はそれに溺れてバリエーションが少なくなりがちだが、中村はワイドレンジシューターでありながら、シュートバリエーション自体も多いという珍しいタイプだ。
シュートに自信があるゆえに、変に慌ててミスをすることも少ない。ヘディングを含めてクロスに合わせるシュートがもっと上手くなれば、より怖さが出るはずで、その点はこれからの“伸びしろ”と言えるかもしれない。
カットインしての右足シュートという絶対的な武器があるゆえに、FWでプレーする時も左に流れることが多い。それならばということで、左MFでの起用も増えていて、これもなかなかハマってきた。本人も「体力にも自信ありますし、持ったらスルーパスも出せるし、カットインもできる、得意なところを出せるポジション」と、このポジションの役割をしっかり消化している。
果たしてこのストライカーは、勝負の懸かる国際大会でどれだけのクオリティを見せてくれるのか。日本のことを研究するチームも出てくるはずで、「必殺の右」を封殺にかかられた時に、それを上回る「武器」を出せるかどうか。
2年後には争奪戦必至の目玉タレントとして早くもJクラブのスカウト陣からチェックを受ける逸材が、その真価と進化を問われることになる。
取材・文:川端暁彦(フリーライター)