「札幌が勝点で一番上だったという事実しか残らない」
[J2・42節]札幌 0-0 金沢/11月20日/札幌ド
11月16日。チラチラと雪の舞う日だった。「5月に行なったインタビューの際に『シーズン20ゴールは最低限の仕事だと思っている』と言っていたが」と都倉賢に伝えて、反応を待った。
すると、「そんなこと言いましたっけ」とイタズラっ子のように笑う。「きっと勢いがあったんでしょうね」。そう続けると、徐々に神妙な面持ちに変化していった。
ただ、「言わなければ良かった」などという顔ではない。自分のゴールがチームをJ1に近づけている――。今季の開幕当初から、そんな責任感をより強く感じながらプレーしてきた。
「得点できずに勝点を逃せば自分のせい。言い訳したり、逃げ道を作ったりはしない。すべてはチームを上へと引き上げるため」。多少の悲壮感すらも纏っているように思えた。
11月20日。クラブはJ2優勝でのJ1昇格を決めた。ただ、J3降格の危機だった金沢を相手にホームでスコアレスドロー。90分でゴールが生まれることはなかった。
ビールかけを終えた都倉に、少し意地悪だと分かりながら「最低限と言っていた20ゴールに届かなかったが」との言葉をぶつけてみた。様々なものを抱えたストライカーは、どんな答を導くのかが知りたかった。
「最低限を達成できなかったので、まだまだ未熟なんでしょう。ただ、今日のゲームに関してはスコアがゼロのままで時計が進めばいいと自分の中では考えていた。
もちろん個人としてシーズンで20得点するのは素晴らしいことですけど、やはり失点をせずにJ1昇格を決めた一員になれたので、いい仕事ができたと思っている」
自分の得点がチームを引き上げるうえで最適だと考えているから、ゴールにこだわる。だが最終節は違った。それだけなのかもしれない。
トップディビジョンで戦う来季に話を向けられた際にも、ストライカーとしての自分なりのこだわりが顔を覗かせた。
「ふた桁ゴールを取っているFWがいれば、J1に残留できると思う。それを自分の仕事として、最低限の数字にしてこだわっていきたい」
20ゴールに届かなかったから、最低限の仕事をこなせなかったのではない。J2タイトルを獲得し、ひとつ上のステージに上がったのだから、最高の仕事をこなしたと言ってもいいはずだ。
「やはりシーズンを通しての仕事。今日のゲームの内容云々ではなく、1シーズンを戦って、札幌が勝点で一番上だったという事実しか残らない」
1年で元いた場所に逆戻り。そんな事実は残したくない。来季こそは、最低限の数字(二桁得点)か、最高の仕事(J1残留)か、ではなく、どちらの達成も最前線で身体を張り続ける男に期待したい。
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
【札幌 0-0 金沢 PHOTO】手堅く失点を許さず札幌がJ1自動昇格&J2優勝!
11月16日。チラチラと雪の舞う日だった。「5月に行なったインタビューの際に『シーズン20ゴールは最低限の仕事だと思っている』と言っていたが」と都倉賢に伝えて、反応を待った。
すると、「そんなこと言いましたっけ」とイタズラっ子のように笑う。「きっと勢いがあったんでしょうね」。そう続けると、徐々に神妙な面持ちに変化していった。
ただ、「言わなければ良かった」などという顔ではない。自分のゴールがチームをJ1に近づけている――。今季の開幕当初から、そんな責任感をより強く感じながらプレーしてきた。
「得点できずに勝点を逃せば自分のせい。言い訳したり、逃げ道を作ったりはしない。すべてはチームを上へと引き上げるため」。多少の悲壮感すらも纏っているように思えた。
11月20日。クラブはJ2優勝でのJ1昇格を決めた。ただ、J3降格の危機だった金沢を相手にホームでスコアレスドロー。90分でゴールが生まれることはなかった。
ビールかけを終えた都倉に、少し意地悪だと分かりながら「最低限と言っていた20ゴールに届かなかったが」との言葉をぶつけてみた。様々なものを抱えたストライカーは、どんな答を導くのかが知りたかった。
「最低限を達成できなかったので、まだまだ未熟なんでしょう。ただ、今日のゲームに関してはスコアがゼロのままで時計が進めばいいと自分の中では考えていた。
もちろん個人としてシーズンで20得点するのは素晴らしいことですけど、やはり失点をせずにJ1昇格を決めた一員になれたので、いい仕事ができたと思っている」
自分の得点がチームを引き上げるうえで最適だと考えているから、ゴールにこだわる。だが最終節は違った。それだけなのかもしれない。
トップディビジョンで戦う来季に話を向けられた際にも、ストライカーとしての自分なりのこだわりが顔を覗かせた。
「ふた桁ゴールを取っているFWがいれば、J1に残留できると思う。それを自分の仕事として、最低限の数字にしてこだわっていきたい」
20ゴールに届かなかったから、最低限の仕事をこなせなかったのではない。J2タイトルを獲得し、ひとつ上のステージに上がったのだから、最高の仕事をこなしたと言ってもいいはずだ。
「やはりシーズンを通しての仕事。今日のゲームの内容云々ではなく、1シーズンを戦って、札幌が勝点で一番上だったという事実しか残らない」
1年で元いた場所に逆戻り。そんな事実は残したくない。来季こそは、最低限の数字(二桁得点)か、最高の仕事(J1残留)か、ではなく、どちらの達成も最前線で身体を張り続ける男に期待したい。
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
【札幌 0-0 金沢 PHOTO】手堅く失点を許さず札幌がJ1自動昇格&J2優勝!