川崎のサッカーだからこそ、という側面も…。
2017年1月4日、大久保嘉人のFC東京への完全移籍が決定した。このオフ、FC東京は名古屋から永井謙佑、鳥栖から林彰洋など代表クラスを引き抜いているが、ただ、誰を補強するかは最重要ではない。
FC東京が来季に向け、まず固めるべきは戦い方だ。続投が決定した篠田善之監督の下、今季後半戦で見せた「ハイプレス」、「攻守の素早い切り替え」など基礎の部分を突き詰め、組織の完成度を高める──。いわゆる継続路線こそ、リーグ制覇への近道ではないだろうか。
事実、守備組織が売りのマッシモ・フィッカデンティ監督から「アクションフットボール」(アグレッシブな攻撃と能動的なディフェンス)を標榜した城福監督に指揮権を委ねた今季、チームはどこか混乱しているように見えた。いわば、カウンターからポゼッションサッカーへの急な方向転換(少なくとも記者はそう感じた)が低迷の原因だった。
昨季の年間4位を受けてJ1初制覇を目指した今季は、「頂戦」というクラブスローガンも空しく年間9位。「アクションフットボール」を完成できないまま第2ステージ5節の川崎戦後(結果は0-1の敗戦)に城福監督は解任されたわけだが、急な方向転換が混乱を招いたのはこれが初めてではない。
例えば14年シーズン。ポゼッションサッカーを提唱したランコ・ポポヴィッチからフィッカデンティ政権に移ると、守備的な戦い方に戸惑う選手がいた。ベースが固まった15年シーズンにチームは躍進を遂げるが、その翌年に城福氏を招聘。「攻撃的(ポポヴィッチ政権)→守備的(フィッカデンティ政権)→攻撃的(城福政権)」と振り幅が大きければ、組織が固まらないのも無理はない。
A代表でもプレーする森重真人と丸山祐市、技巧派の中島翔哉などタレントの顔ぶれはJリーグでも屈指のレベルなのに結果が伴わないのは、おそらく継続性に欠けたチーム作りに原因があった。
だからこそ、補強は二の次なのだ。大久保を獲得できたからといって、このストライカーありきのチーム作りに着手したら、高い確率で“振り出し”に戻る。なにより重要なのは篠田監督のコンセプトを貫いたうえで、大久保が戦力として必要なら組み込む。それが正しいプロセスだ。
もちろん、大久保の実力を否定しているわけではない。J1リーグで3年連続得点王(13~15年)に輝いた実績は素晴らしいし、紛れもなく日本屈指のFWだ。ただ、パスワークを基調とした川崎のサッカーだからこそ、あそこまでゴールを量産できた側面もある。
2016年6月、日本代表監督のヴァイッド・ハリルホジッチは大久保について次のようにコメントしていた。
「ペナルティエリア付近でしか動きが見られない。彼には天性の感覚がある。ただ、A代表に呼ぶとなると、簡単なことじゃない。ここでは組み立てにも参加し、守備にも戻らないといけない」
ハリルホジッチ監督の見解を鵜呑みにすれば、“運動量”が基盤となりそうな篠田トーキョーに大久保が果たしてマッチするのかという、そもそもの疑問が浮かび上がる。
なにより重要なのはやはり、継続したチーム作り。悲願のリーグ制覇に向けて、大久保が最大の切り札になるわけではないだろう。
文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)
FC東京が来季に向け、まず固めるべきは戦い方だ。続投が決定した篠田善之監督の下、今季後半戦で見せた「ハイプレス」、「攻守の素早い切り替え」など基礎の部分を突き詰め、組織の完成度を高める──。いわゆる継続路線こそ、リーグ制覇への近道ではないだろうか。
事実、守備組織が売りのマッシモ・フィッカデンティ監督から「アクションフットボール」(アグレッシブな攻撃と能動的なディフェンス)を標榜した城福監督に指揮権を委ねた今季、チームはどこか混乱しているように見えた。いわば、カウンターからポゼッションサッカーへの急な方向転換(少なくとも記者はそう感じた)が低迷の原因だった。
昨季の年間4位を受けてJ1初制覇を目指した今季は、「頂戦」というクラブスローガンも空しく年間9位。「アクションフットボール」を完成できないまま第2ステージ5節の川崎戦後(結果は0-1の敗戦)に城福監督は解任されたわけだが、急な方向転換が混乱を招いたのはこれが初めてではない。
例えば14年シーズン。ポゼッションサッカーを提唱したランコ・ポポヴィッチからフィッカデンティ政権に移ると、守備的な戦い方に戸惑う選手がいた。ベースが固まった15年シーズンにチームは躍進を遂げるが、その翌年に城福氏を招聘。「攻撃的(ポポヴィッチ政権)→守備的(フィッカデンティ政権)→攻撃的(城福政権)」と振り幅が大きければ、組織が固まらないのも無理はない。
A代表でもプレーする森重真人と丸山祐市、技巧派の中島翔哉などタレントの顔ぶれはJリーグでも屈指のレベルなのに結果が伴わないのは、おそらく継続性に欠けたチーム作りに原因があった。
だからこそ、補強は二の次なのだ。大久保を獲得できたからといって、このストライカーありきのチーム作りに着手したら、高い確率で“振り出し”に戻る。なにより重要なのは篠田監督のコンセプトを貫いたうえで、大久保が戦力として必要なら組み込む。それが正しいプロセスだ。
もちろん、大久保の実力を否定しているわけではない。J1リーグで3年連続得点王(13~15年)に輝いた実績は素晴らしいし、紛れもなく日本屈指のFWだ。ただ、パスワークを基調とした川崎のサッカーだからこそ、あそこまでゴールを量産できた側面もある。
2016年6月、日本代表監督のヴァイッド・ハリルホジッチは大久保について次のようにコメントしていた。
「ペナルティエリア付近でしか動きが見られない。彼には天性の感覚がある。ただ、A代表に呼ぶとなると、簡単なことじゃない。ここでは組み立てにも参加し、守備にも戻らないといけない」
ハリルホジッチ監督の見解を鵜呑みにすれば、“運動量”が基盤となりそうな篠田トーキョーに大久保が果たしてマッチするのかという、そもそもの疑問が浮かび上がる。
なにより重要なのはやはり、継続したチーム作り。悲願のリーグ制覇に向けて、大久保が最大の切り札になるわけではないだろう。
文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)