豊富な運動量とボールテクニックを兼備したアタッカー。
2013年10月に開催されたU-17ワールドカップで、日本代表は世界を驚かせた。ショートパスをテンポよく繋ぎ、主導権を握って戦うサッカーで対戦相手を翻弄。ベスト16で敗退したものの、多方面から高評価を得たのだった。
世界の舞台で輝きを放ったその俊英たちは、はたしてどんな可能性を秘めているのか。将来を嘱望される彼ら逸材を、世界基準で分析・評価してみようというのが、当企画の趣旨だ。
分析を依頼したのは、英国人の戦術アナリストで、マンチェスター・シティの下部組織で分析官を務めるアーロン・ブリッグス氏。日本サッカー界の将来を担う有望株を、“本場”のプロが査定する。
連載第1回を飾るのは、U-17W杯でいわゆる“偽のCF”を務めた杉本太郎。帝京大可児高からこの春、鹿島アントラーズに入団したアタッカーに迫る。
杉本太郎(FW)|帝京大可児→鹿島アントラーズ|96/2/12|162・62
【ボールコントロール】:7/10
密集地帯でも乱れないボールテクニックは評価できる。ただし、ファーストタッチとボールの受け方に改善の余地があり、これを向上させることで、より素早いプレー展開が可能になる。
【ドリブル】:7/10
つねに足を止めず、人に向かって仕掛けるドリブルよりも、スペースにボールを運ぶラン・ウィズ・ザ・ボールが得意なタイプに見受けられた。1対1の仕掛けで切り崩そうとせず、味方を使ってのコンビネーションプレーを好む。
【オフェンス能力】:8/10
天性のフィニッシャーではないものの、豊富な運動量を活かして点を取る。鍛錬を怠らず、実戦経験を積んでいくことで、おのずと決定力も向上するはずだ。
【ディフェンス能力】:6/10
やるべき守備のタスクを理解しきれていない。チームのファーストディフェンダーとしてプレスをかけるのはいいが、闇雲に真っ直ぐ突っ込むのではなく、相手を一方に追い詰め、プレーを限定させる工夫が必要だ。
【ヘディング】:6/10
味方につなぐ柔らかいヘディングこそ上手いが、前線の基準点として、空中戦で相手DFの脅威になるような存在ではない。
【タックル】:7/10
恐れずに足を出し、前線で積極果敢なチャレンジをするため、相手DFからは嫌がられるタイプだ。
【ロングパス】:‐
U-17W杯での日本代表はシュートパス主体のポゼッションサッカーを実践していた。判断材料がその大会に限られているため、評価は控えさせていただく。
【ショートパス】:8/10
足下のスキルがあり、パスセンスも優れる。味方とのコンビネーションプレーは秀逸で、パスサッカーを追求したチームに欠かせない存在となっていた。
【右足】:8/10
右足が利き足で、プレーのほとんどは右で始まり、右で終わる。右足でのボールコントロールは高水準で、U-17W杯では幾度となく得点機を演出していた。
【左足】:7/10
弱点というほどではないが、利き足の右足と比べると改善の余地がある。
【戦術理解力】:7/10
トップ下やセカンドトップに適したタイプ。低い位置まで下がってのコンビネーションを好み、味方にパスを預けた後は、ボックス内に走りこむか、低い位置からDFの間でパスを受けるプレーをよく見せていた。4-3-3の中盤センターやサイドでのプレーも可能だろう。CFとしては、ポジショニングがいまひとつで、フィニッシュへの積極性と狡猾さに欠けているようだった。
【運動能力】:8/10
生まれ持ってのスピードはないものの、反射神経が良く、身のこなしは鋭く俊敏だ。足を止めずオフ・ザ・ボールの動きを繰り返す意欲がある。フィジカルは劣っているわけではないが、DFに背を向けて足下にボールをしっかり収められるほど強くはないようだ。
【パーソナリティー】:9/10
エネルギッシュで、積極的に味方に声をかけるリーダーとしての資質が備わっている。負けん気が強く、チームの先頭に立ち、動き回って周囲を鼓舞する。今後は、単純に走り回るだけではなく、クレバーな動きで相手に容易な対応をさせないことで、自身のスタミナ温存にも努めたい。
【長所】
パス・アンド・ムーブを繰り返すコンビネーションプレーは非常に効果的。豊富な運動量を活かした攻守両面への関与は、今後も継続し、さらに伸ばしていくべき長所だ。
【短所】
いわゆる無駄走りを減らして、ボールを保持している時とオフ・ザ・ボールの両局面で、よりクレバーにプレーする賢さを身につけたい。そうすれば、戦術理解度も向上するはずだ。
【分析者】
Aaron BRIGGS|Manchester City EDS analyst
アーロン・ブリッグス/マンチェスター・シティ EDSアナリスト
イングランド人の戦術アナリスト。プレストン・ノースエンドから2011年夏にマンチェスター・シティに引き抜かれ、現在は「エリート・ディベロップメント・スカッド(EDS)」と呼ばれるU-21チームの分析官を務める。英国内だけでなく、広くヨーロッパ中のユース年代のタレントに精通している。
【翻訳】
松澤浩三
世界の舞台で輝きを放ったその俊英たちは、はたしてどんな可能性を秘めているのか。将来を嘱望される彼ら逸材を、世界基準で分析・評価してみようというのが、当企画の趣旨だ。
分析を依頼したのは、英国人の戦術アナリストで、マンチェスター・シティの下部組織で分析官を務めるアーロン・ブリッグス氏。日本サッカー界の将来を担う有望株を、“本場”のプロが査定する。
連載第1回を飾るのは、U-17W杯でいわゆる“偽のCF”を務めた杉本太郎。帝京大可児高からこの春、鹿島アントラーズに入団したアタッカーに迫る。
杉本太郎(FW)|帝京大可児→鹿島アントラーズ|96/2/12|162・62
【ボールコントロール】:7/10
密集地帯でも乱れないボールテクニックは評価できる。ただし、ファーストタッチとボールの受け方に改善の余地があり、これを向上させることで、より素早いプレー展開が可能になる。
【ドリブル】:7/10
つねに足を止めず、人に向かって仕掛けるドリブルよりも、スペースにボールを運ぶラン・ウィズ・ザ・ボールが得意なタイプに見受けられた。1対1の仕掛けで切り崩そうとせず、味方を使ってのコンビネーションプレーを好む。
【オフェンス能力】:8/10
天性のフィニッシャーではないものの、豊富な運動量を活かして点を取る。鍛錬を怠らず、実戦経験を積んでいくことで、おのずと決定力も向上するはずだ。
【ディフェンス能力】:6/10
やるべき守備のタスクを理解しきれていない。チームのファーストディフェンダーとしてプレスをかけるのはいいが、闇雲に真っ直ぐ突っ込むのではなく、相手を一方に追い詰め、プレーを限定させる工夫が必要だ。
【ヘディング】:6/10
味方につなぐ柔らかいヘディングこそ上手いが、前線の基準点として、空中戦で相手DFの脅威になるような存在ではない。
【タックル】:7/10
恐れずに足を出し、前線で積極果敢なチャレンジをするため、相手DFからは嫌がられるタイプだ。
【ロングパス】:‐
U-17W杯での日本代表はシュートパス主体のポゼッションサッカーを実践していた。判断材料がその大会に限られているため、評価は控えさせていただく。
【ショートパス】:8/10
足下のスキルがあり、パスセンスも優れる。味方とのコンビネーションプレーは秀逸で、パスサッカーを追求したチームに欠かせない存在となっていた。
【右足】:8/10
右足が利き足で、プレーのほとんどは右で始まり、右で終わる。右足でのボールコントロールは高水準で、U-17W杯では幾度となく得点機を演出していた。
【左足】:7/10
弱点というほどではないが、利き足の右足と比べると改善の余地がある。
【戦術理解力】:7/10
トップ下やセカンドトップに適したタイプ。低い位置まで下がってのコンビネーションを好み、味方にパスを預けた後は、ボックス内に走りこむか、低い位置からDFの間でパスを受けるプレーをよく見せていた。4-3-3の中盤センターやサイドでのプレーも可能だろう。CFとしては、ポジショニングがいまひとつで、フィニッシュへの積極性と狡猾さに欠けているようだった。
【運動能力】:8/10
生まれ持ってのスピードはないものの、反射神経が良く、身のこなしは鋭く俊敏だ。足を止めずオフ・ザ・ボールの動きを繰り返す意欲がある。フィジカルは劣っているわけではないが、DFに背を向けて足下にボールをしっかり収められるほど強くはないようだ。
【パーソナリティー】:9/10
エネルギッシュで、積極的に味方に声をかけるリーダーとしての資質が備わっている。負けん気が強く、チームの先頭に立ち、動き回って周囲を鼓舞する。今後は、単純に走り回るだけではなく、クレバーな動きで相手に容易な対応をさせないことで、自身のスタミナ温存にも努めたい。
【長所】
パス・アンド・ムーブを繰り返すコンビネーションプレーは非常に効果的。豊富な運動量を活かした攻守両面への関与は、今後も継続し、さらに伸ばしていくべき長所だ。
【短所】
いわゆる無駄走りを減らして、ボールを保持している時とオフ・ザ・ボールの両局面で、よりクレバーにプレーする賢さを身につけたい。そうすれば、戦術理解度も向上するはずだ。
【分析者】
Aaron BRIGGS|Manchester City EDS analyst
アーロン・ブリッグス/マンチェスター・シティ EDSアナリスト
イングランド人の戦術アナリスト。プレストン・ノースエンドから2011年夏にマンチェスター・シティに引き抜かれ、現在は「エリート・ディベロップメント・スカッド(EDS)」と呼ばれるU-21チームの分析官を務める。英国内だけでなく、広くヨーロッパ中のユース年代のタレントに精通している。
【翻訳】
松澤浩三