高い技術と戦術眼が日本人選手の大きな武器。
内田、ダブル酒井、長友と、欧州で高い評価を得ているのが日本人のSBだ。その理由は、どこにあるのか。選手、そして監督として日本サッカーと長く関わり、現在はヴォルフスブルクでスカウトを務めるピエール・リトバルスキー氏に、その答を求めた。
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日本人SBが、なぜ欧州で高く評価されているのか――。大きな理由として挙げられるのは、戦術進化の方向性と、選手としての能力や特性が上手く合致している点だ。
まず現在のブンデスリーガでは、ビルドアップの際にCBがペナルティーエリアの幅ぎりぎりまでワイドに開き、SBがハーフウェーライン付近まで上がっていくパターンが一般的になってきている。このような戦術を採用する場合は、SBに求められる条件も当然のように変わる。
深い位置で守備を担うのではなく、前方でビルドアップやチャンスメイクにも絡もうとするならば、豊富な運動量はもとより、相手にプレッシャーを掛けられている状態でも、確実にボールをコントロールできる能力が求められる。日本人SBが評価されている理由は、まさにここにあると言える。内田や宏樹と高徳のふたりの酒井、長友などは、狭いスペースできちんとボールをつなぐことができるからだ。
それを可能にするのが、日本の育成環境だ。元々、日本人選手のテクニックはレベルが高いが、欧州の感覚からすれば、フットサルと見紛うようなスペースでのプレーの仕方も、幼少期から学んでいく。ピッチの中央、特にハーフウェーライン周辺は、ただでさえ敵味方の選手がひしめいている。タッチライン際ともなれば、スペースはさらに限定されてくるが、日本の選手はまったく苦にしない。
また、戦術の進化に関して言えば、ゲームのテンポが上がったことと、攻撃から守備、そして守備から攻撃へという、局面の転換が早くなってきた点も指摘できるだろう。
昨今の試合では、カウンターからチャンスを作ったり、ゴールを奪うケースが大半を占めるようになった。組織サッカーが浸透した結果、速攻をベースにしないと、相手守備陣を崩せなくなってきたからだ。素早くプレーを切り替える能力は、攻撃から守備に移る際にも決定的に重要になるが、日本人選手はこの「トランジションゲーム」を実にスムーズにこなしてみせる。狭いスペースを活用するテクニック同様、戦術眼の確かさは、大きな武器になっている。
このような現象は、「評価基準の変化」としても捉えられる。
かつて日本人SBがヨーロッパでプレーし始めた頃に、最も評価されていたのはディシプリン溢れるプレースタイルだった。90分間、タッチライン沿いを上下動し続ける姿勢や、無尽蔵のスタミナ、最後まで試合を諦めないファイティングスピリット、そしてチームプレーを最優先する献身的な姿勢などだ。
だが、今は違う。ブンデスリーガのサッカーが進化した結果として、SBは機械のようにプレーし続けるだけでは評価されなくなった。役割分担に関して述べれば、試合で担う攻守の比率は50対50にまで変化している。
日本人SBは、このような変化に見事に対応してみせた。欧州で彼らが存在感を増しているのは、単にプレーしている選手の数が増えたからでも、年数が長くなってきたからでもない。新世代のSBに求められるニーズを、きちんと満たしているからなのである。
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日本人SBが、なぜ欧州で高く評価されているのか――。大きな理由として挙げられるのは、戦術進化の方向性と、選手としての能力や特性が上手く合致している点だ。
まず現在のブンデスリーガでは、ビルドアップの際にCBがペナルティーエリアの幅ぎりぎりまでワイドに開き、SBがハーフウェーライン付近まで上がっていくパターンが一般的になってきている。このような戦術を採用する場合は、SBに求められる条件も当然のように変わる。
深い位置で守備を担うのではなく、前方でビルドアップやチャンスメイクにも絡もうとするならば、豊富な運動量はもとより、相手にプレッシャーを掛けられている状態でも、確実にボールをコントロールできる能力が求められる。日本人SBが評価されている理由は、まさにここにあると言える。内田や宏樹と高徳のふたりの酒井、長友などは、狭いスペースできちんとボールをつなぐことができるからだ。
それを可能にするのが、日本の育成環境だ。元々、日本人選手のテクニックはレベルが高いが、欧州の感覚からすれば、フットサルと見紛うようなスペースでのプレーの仕方も、幼少期から学んでいく。ピッチの中央、特にハーフウェーライン周辺は、ただでさえ敵味方の選手がひしめいている。タッチライン際ともなれば、スペースはさらに限定されてくるが、日本の選手はまったく苦にしない。
また、戦術の進化に関して言えば、ゲームのテンポが上がったことと、攻撃から守備、そして守備から攻撃へという、局面の転換が早くなってきた点も指摘できるだろう。
昨今の試合では、カウンターからチャンスを作ったり、ゴールを奪うケースが大半を占めるようになった。組織サッカーが浸透した結果、速攻をベースにしないと、相手守備陣を崩せなくなってきたからだ。素早くプレーを切り替える能力は、攻撃から守備に移る際にも決定的に重要になるが、日本人選手はこの「トランジションゲーム」を実にスムーズにこなしてみせる。狭いスペースを活用するテクニック同様、戦術眼の確かさは、大きな武器になっている。
このような現象は、「評価基準の変化」としても捉えられる。
かつて日本人SBがヨーロッパでプレーし始めた頃に、最も評価されていたのはディシプリン溢れるプレースタイルだった。90分間、タッチライン沿いを上下動し続ける姿勢や、無尽蔵のスタミナ、最後まで試合を諦めないファイティングスピリット、そしてチームプレーを最優先する献身的な姿勢などだ。
だが、今は違う。ブンデスリーガのサッカーが進化した結果として、SBは機械のようにプレーし続けるだけでは評価されなくなった。役割分担に関して述べれば、試合で担う攻守の比率は50対50にまで変化している。
日本人SBは、このような変化に見事に対応してみせた。欧州で彼らが存在感を増しているのは、単にプレーしている選手の数が増えたからでも、年数が長くなってきたからでもない。新世代のSBに求められるニーズを、きちんと満たしているからなのである。