都並の復帰でバランスが戻る。
1月9日にアジアカップが開幕する。連覇を目指す日本は12日のパレスチナ戦で大会をスタートさせる。
史上最多4度のアジア制覇を成し遂げている日本代表。ドラマに富んだその4度の優勝を『週刊サッカーダイジェスト』のアーカイブからお届けしよう。
日本の初優勝は、1992年大会。自国開催の広島で勝ち取った栄冠だった。
初優勝までの軌跡を追った特派レポートを、週刊サッカーダイジェスト1992年12月3日号より。
――◆――◆――
UAEとの試合を終えた先月号の段階で、日本は強くなった、しかし今大会では苦しい闘いを強いられると、本誌は見ていた。
日本代表がこれまで対戦した相手は、そのほとんどが実力的に上のチームである。持てる攻撃能力すべてを発揮し、得点を狙うことだけに集中していればよかった。
しかし、今大会は違う。プロリーグの誕生、ダイナスティカップ優勝。さらには開催国というアドバンテージ。日本に有利な諸々の条件は、各国の極端な守備編重を招いていた。
それを打ち破っていく力は、今の日本にはない。ナビスコカップでの連戦から、選手たちの疲労は、ピークに達しているに違いない――だから日本は苦戦を強いられると、本誌では予想していた。
ところが日本は優勝した。打ち破っていく力を、確かに見せてくれた。
それでは、いくつかのポイントから、日本の勝因を探っていこう。
「UAEと北朝鮮の前半、攻撃がいまひとつって言われたでしょ。でもね、MFとFWが調子いいだけじゃ、攻めはできないよ。このチームは選手同士の絡みが、すごく大事なんだ。MFの良さを引き出すのはDFだし、DFの良さを引き出すのはMFなんだから」
予選リーグ2試合目まで日本は、チームがバラバラだった。攻めながらも、なかなか点が取れなかった。相手の守備的な作戦も確かに大きいが、もっとも重大なのは、北澤が言うところのMFとDFの関係、いわばバランスだった。
UAE戦を思い出してほしい。ダイナスティカップの警告により、都並が出場できなかった。そのため日本は左サイドに堀池を回し、右に勝矢を入れている。
2トップで闘う日本にとって、両サイドからのフォローは、欠かせない要素である。堀池も、勝矢も、ハーフラインを越えてプレーすることはあった。しかし、MFから崩しのパスを受けてセンタリングするとか、逆に自らが中へ切れ込んで外側にスペースを作り、そこへMFを走り込ませるといった動きは、ほとんどなかった。
UAE戦でMVPに選ばれた北澤は、確かにいいプレーをした。積極的にシュートも放っていた。ところが、そうしたシーンはすべて自ら突破を図ったり、外から中へ切れ込んでフィニッシュしたものだった。
DFとMFのバランスが悪くなると、当然のことながら、MFと2トップの関係も悪くなってくる。パスがこないためにカズが下がることで、もうひとりのトップ高木は、もともと厳しいマークを受けているにもかかわらず、さらに厳しい状況に追い込まれてしまう。たとえクサビが入っても、フォローがないため、相手にとっては非常にたやすい攻撃となっていた。
それが、都並が左サイドに戻ったことで解消された。バラバラの状態だった日本が、北朝鮮戦の後半から見違えるようなサッカーを展開できたのは、ひとえに両サイドバックのフォローがあったからである。
史上最多4度のアジア制覇を成し遂げている日本代表。ドラマに富んだその4度の優勝を『週刊サッカーダイジェスト』のアーカイブからお届けしよう。
日本の初優勝は、1992年大会。自国開催の広島で勝ち取った栄冠だった。
初優勝までの軌跡を追った特派レポートを、週刊サッカーダイジェスト1992年12月3日号より。
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UAEとの試合を終えた先月号の段階で、日本は強くなった、しかし今大会では苦しい闘いを強いられると、本誌は見ていた。
日本代表がこれまで対戦した相手は、そのほとんどが実力的に上のチームである。持てる攻撃能力すべてを発揮し、得点を狙うことだけに集中していればよかった。
しかし、今大会は違う。プロリーグの誕生、ダイナスティカップ優勝。さらには開催国というアドバンテージ。日本に有利な諸々の条件は、各国の極端な守備編重を招いていた。
それを打ち破っていく力は、今の日本にはない。ナビスコカップでの連戦から、選手たちの疲労は、ピークに達しているに違いない――だから日本は苦戦を強いられると、本誌では予想していた。
ところが日本は優勝した。打ち破っていく力を、確かに見せてくれた。
それでは、いくつかのポイントから、日本の勝因を探っていこう。
「UAEと北朝鮮の前半、攻撃がいまひとつって言われたでしょ。でもね、MFとFWが調子いいだけじゃ、攻めはできないよ。このチームは選手同士の絡みが、すごく大事なんだ。MFの良さを引き出すのはDFだし、DFの良さを引き出すのはMFなんだから」
予選リーグ2試合目まで日本は、チームがバラバラだった。攻めながらも、なかなか点が取れなかった。相手の守備的な作戦も確かに大きいが、もっとも重大なのは、北澤が言うところのMFとDFの関係、いわばバランスだった。
UAE戦を思い出してほしい。ダイナスティカップの警告により、都並が出場できなかった。そのため日本は左サイドに堀池を回し、右に勝矢を入れている。
2トップで闘う日本にとって、両サイドからのフォローは、欠かせない要素である。堀池も、勝矢も、ハーフラインを越えてプレーすることはあった。しかし、MFから崩しのパスを受けてセンタリングするとか、逆に自らが中へ切れ込んで外側にスペースを作り、そこへMFを走り込ませるといった動きは、ほとんどなかった。
UAE戦でMVPに選ばれた北澤は、確かにいいプレーをした。積極的にシュートも放っていた。ところが、そうしたシーンはすべて自ら突破を図ったり、外から中へ切れ込んでフィニッシュしたものだった。
DFとMFのバランスが悪くなると、当然のことながら、MFと2トップの関係も悪くなってくる。パスがこないためにカズが下がることで、もうひとりのトップ高木は、もともと厳しいマークを受けているにもかかわらず、さらに厳しい状況に追い込まれてしまう。たとえクサビが入っても、フォローがないため、相手にとっては非常にたやすい攻撃となっていた。
それが、都並が左サイドに戻ったことで解消された。バラバラの状態だった日本が、北朝鮮戦の後半から見違えるようなサッカーを展開できたのは、ひとえに両サイドバックのフォローがあったからである。