横浜、湘南で成果を上げてきたサッカービジネスの“プロ”に白羽の矢を立てる。
「選手は(Jリーグが始まって)10年でプロ化しました。監督も20年で日本人監督がプロとして飯を食っていけるような業界にはなんとかなったと思います。30年目に向けては、私のような経営者が、本当の意味でのスポーツビジネスをオペレーションできる経営者として、もっともっと出てきてほしいなという想いを込めて、今回は移籍したつもりでいます」
2月1日に清水エスパルスの新社長に就任した左伴繁雄氏は、会見のあいさつでこのように語り、フロント業務に関しても「プロ」という言葉を多用した。
左伴社長は、2001年6月に日産自動車から横浜F・マリノスの社長に就任。初年度はチームが最終節まで残留争いに巻き込まれるという経験をしたが、その後成績をV字回復させ、03年からは2年連続でJリーグ王者に導く。
しかし、チーム成績が再び下降線を辿り07年5月に辞任。一度は日産に戻ったものの、同社を退職して08年11月に湘南ベルマーレの専務に就任した。これを機に、サッカークラブの経営のプロとしての道を本格的に歩み始め、湘南でも多くの成果を上げて、清水に“移籍”してきた。
一方、清水としても、株主会社出身ではない社長は初めてで、左伴社長自身もそれを「英断」として敬意を表した。チーム事情としては、近年の成績不振の責任をとる形で竹内康人前社長が辞し(専務に就任)、チーム改革の一環としてサッカービジネスの“プロ”に白羽の矢を立てたという構図になる。
つまり、清水にとっても大きなチャレンジであり、昨年J2降格の危機を迎えたクラブが生まれ変われるかどうかは、新社長の手腕にも大きく左右されるということで地元の注目を集めている。
その意味では、左伴新社長の言葉は非常に熱気があり、自信に満ちていた。会見は、社長の30分を超えるあいさつから質疑応答も含めて約1時間。そのなかで、具体的な経営数値も交えてさまざまな強化方針が語られた。
とりわけメディアの注目を集めたのは、当初の予算より強化費が「億単位で」増額され、新たな外国籍選手をふたり獲得する予定が発表されたこと。左伴社長は「ゴール前で恐さのないクラブはつまらないと個人的に思っています。今獲りにいっている外国人も、巧いだけの奴はいらない、日本人DFが一番恐がりそうな選手を求めています」と語るが、それは楽しみにしたいところだ。
そして、長期的にも短期的にも財務力の強化を重要な経営ビジョンに据え、新たなアイデアによる事業の多角化も示唆。それも含めた「売りの文化」や「営業力の強化」という部分をフロント課題として挙げた。そのうえで3年間を目途に、平均的なトップ3のチームに匹敵する強化費の確保を目標とした。
クラブとして提供するサッカーに関しては、「90分は勝利以外のためには絶対に使わない。90分は走り切るためのステージである。90分は前への意識を持ち続ける90分である。90分はコンビネーションと恐さのブレンドがベストミックスになった時のステージである」と大きな指針を語り、その面では大榎克己監督と一致していると説明した。
“恐さ”のあるサッカーを目指しつつ、財務力も着実に強化しながら初のリーグ制覇を目指していくと、新社長は力強く宣言した。
取材・文・写真:前島芳雄(フリーライター)
2月1日に清水エスパルスの新社長に就任した左伴繁雄氏は、会見のあいさつでこのように語り、フロント業務に関しても「プロ」という言葉を多用した。
左伴社長は、2001年6月に日産自動車から横浜F・マリノスの社長に就任。初年度はチームが最終節まで残留争いに巻き込まれるという経験をしたが、その後成績をV字回復させ、03年からは2年連続でJリーグ王者に導く。
しかし、チーム成績が再び下降線を辿り07年5月に辞任。一度は日産に戻ったものの、同社を退職して08年11月に湘南ベルマーレの専務に就任した。これを機に、サッカークラブの経営のプロとしての道を本格的に歩み始め、湘南でも多くの成果を上げて、清水に“移籍”してきた。
一方、清水としても、株主会社出身ではない社長は初めてで、左伴社長自身もそれを「英断」として敬意を表した。チーム事情としては、近年の成績不振の責任をとる形で竹内康人前社長が辞し(専務に就任)、チーム改革の一環としてサッカービジネスの“プロ”に白羽の矢を立てたという構図になる。
つまり、清水にとっても大きなチャレンジであり、昨年J2降格の危機を迎えたクラブが生まれ変われるかどうかは、新社長の手腕にも大きく左右されるということで地元の注目を集めている。
その意味では、左伴新社長の言葉は非常に熱気があり、自信に満ちていた。会見は、社長の30分を超えるあいさつから質疑応答も含めて約1時間。そのなかで、具体的な経営数値も交えてさまざまな強化方針が語られた。
とりわけメディアの注目を集めたのは、当初の予算より強化費が「億単位で」増額され、新たな外国籍選手をふたり獲得する予定が発表されたこと。左伴社長は「ゴール前で恐さのないクラブはつまらないと個人的に思っています。今獲りにいっている外国人も、巧いだけの奴はいらない、日本人DFが一番恐がりそうな選手を求めています」と語るが、それは楽しみにしたいところだ。
そして、長期的にも短期的にも財務力の強化を重要な経営ビジョンに据え、新たなアイデアによる事業の多角化も示唆。それも含めた「売りの文化」や「営業力の強化」という部分をフロント課題として挙げた。そのうえで3年間を目途に、平均的なトップ3のチームに匹敵する強化費の確保を目標とした。
クラブとして提供するサッカーに関しては、「90分は勝利以外のためには絶対に使わない。90分は走り切るためのステージである。90分は前への意識を持ち続ける90分である。90分はコンビネーションと恐さのブレンドがベストミックスになった時のステージである」と大きな指針を語り、その面では大榎克己監督と一致していると説明した。
“恐さ”のあるサッカーを目指しつつ、財務力も着実に強化しながら初のリーグ制覇を目指していくと、新社長は力強く宣言した。
取材・文・写真:前島芳雄(フリーライター)