まさかの2連敗で「三冠王者」がすでにACL敗退の危機。
3月3日、アジア・チャンピオンズリーグ(以下、ACL)第2戦、城南戦を戦うべく乗り込んだ韓国の地でも、相変わらず遠藤保仁の人気は高かった。
過去6度出場したACLでも、ほとんどの国で『遠藤ファン』が存在し、空港やスタジアム、時にホテルまで押し掛けてサインや写真撮影を求める光景を目にしてきたが、2010年以来、5年ぶりに訪れた韓国・城南の地でも例に漏れず。
城南戦を終えてバスに乗り込む遠藤を待ち構えていた韓国人ファンが、片言の日本語で『エンドー!』『ヤスヒト!』と声を掛けてカメラを向けた。悔しくも、結果もその10年と同じ“完封負け”を喫することになったのだが……。
城南戦は、キックオフからわずか8分という早い時間帯に失点。結果的に、その一撃が試合の流れを大きく変えた。
第1戦の広州富力戦で10分に失点し、それに伴い相手ゴール前に堅いブロックを築かれることになった反省も踏まえ、「試合の入り方」には細心の注意を払っていたはずだった。ところが8分、エリア内に侵入してきたファン・ウィジョに対し、小椋祥平が思わずファウルを犯してPKを献上。あっさり先制点を献上した。
これにより、城南がゴール前にブロックを形成すると、G大阪はスペースを見つけられずに苦戦。ボールこそ支配するも、攻撃の策に乏しく、エリア内に切れ込んで行くようなチャンスは作れないまま前半を終えた。
その構図は後半に入っても変わらず、G大阪がボールを支配しても攻め手を見出せない状態が続く。そして、欲しかったはずのゴールを再び城南に決められ、その差は2点に広がった。
劣勢の状況を打開しようと、時折、遠藤が縦へ早いボールを送り、攻撃のリズムに変化を加える。さらに、宇佐美貴史を途中投入して攻撃の活性化を図るも、個々の試合勘や連係が不十分なこともあり、なかなかゴールには至らない。結局、G大阪は12年シーズンと同様、ACL開幕2連敗を喫した。
試合後、遠藤は韓国人ファンにカメラを向けられながらバスに乗り込むまでの間、ACL2連敗の原因として「最後の3分の1の精度」を挙げた。
「攻め切ることも、ボックス内に侵入していく回数も圧倒的に少ないな、と。たとえ(相手に)ブロックを作られても、時に強引に切れ込んだりしながら、ボックス内に侵入して行く回数が増えれば、相手に対しても“怖さ”を与えながら、チャンスは十分作れるはず。そこは試合を重ねてコンディションが高まっていけば、十分増やせるところだし、そうなれば結果も伴ってくると思う」
加えて、「2試合続けて完封負けという結果は、決してアジアとの差とは思わない」と語る。代表戦も含め、『アジア』での戦いを積み重ね、常々冷静に試合を振り返ってきた遠藤のこと。決して負け惜しみではないはずだ。
現在のG大阪のメンバーで、昨季以前にACLを経験した選手は半分に満たないが、この2試合で球際の強さを含めた“アジアのスタンダード”を肌身で体感したことで、このステージを勝ち抜く術を会得した選手も多い。
ならば、今はただ遠藤の言葉を信じ、「3分の1の精度」が高まるのを待つしかない。
取材・文:高村美砂