2枚目のDFに潰され、チームの窮地を救えずに終わる。
暫定首位を懸けて挑んだG大阪戦の59分、広島のエース佐藤寿人に代わり、20歳の浅野拓磨がピッチへと入る。ゴールデンウィーク連戦で、すっかりお馴染みとなった光景だ。
【J1 PHOTOハイライト】1stステージ・11節
【J1採点&寸評】1stステージ・11節|全9試合の評価をチェック!
スコアは0-0。求められているのはゴールだ――自分がやるべきことははっきりしていた。「いつも通りのプレーをして来い」と指揮官に送り出された背番号29は、「どんどん裏を狙ってやろう。自分がゴールを取って、試合を決めてやる」と自ら闘争心のスイッチを入れた。しかし……。
直後の60分に先制点を許すと、G大阪に守りを固められ、裏のスペースを消されてしまう。68分、浅野はインターセプトからショートカウンターを仕掛けるも、相手CBの金正也をかわしたところでボールを奪われ、1対1を仕掛けた71分にはカバーに来た今野泰幸に行く手を阻まれる。そして80分以降には、ボールを引き出すことさえできなかった。
「今日は2枚目のディフェンダーに止められてしまった。足もとでボールを受けた時にターンして仕掛けられる場面もあったけど、(1枚目の)奥まで見られるようにならないとトップレベルでは通用しない。自分はまだまだ未熟だなと感じました」
試合後、浅野は自らのプレーをそう振り返った。
冷静に課題を分析できた理由は、参考にしていると公言する宇佐美貴史のプレーを目の当たりにしたからでもあるだろう。G大阪のエースは自ら得点を奪えないまでも、ドリブル突破→シュートの形を匂わせて周りの選手を上手く使い、時にはギアを上げてDFの間を突き破った。この日、唯一のゴールが生まれたシーンも、宇佐美がドリブルを仕掛けて得たFKが起点になっている。
「宇佐美選手はドリブル時のボールの持ち方、スピード・身体の使い方が上手い。自分も負けてないというのを見せたかったですけど、今日はそれができなかった。仕掛ける姿勢は大事にしつつも、周りをしっかり見て、自分の中で最良の判断をしないといけないし、チームメイトが僕に求めているのはスピードが活きるプレーだと分かっているので、味方とのコンビネーションを向上させていかないといけない」(浅野)
試合前に思い描いた「結果を残して、気持ち良く日本代表候補合宿に臨む」青写真は叶わなかった。それでも、浅野にとって「特別なもの」であるA代表に一歩でも近づくためには、下を向いている暇はない。
招集の電話がかかって来た時には「緊張して心臓バクバク(苦笑)」だったというが、日が経つにつれて、緊張は“野心”へと変わっている。
「ダメもとでガムシャラに頑張りたいし、今はやってやろうという気持ちでいっぱいです。(宇佐美選手とも)代表合宿で一緒にやった時に、自分の力を100パーセント出して、少しでも良いところを見せつければいいかなと」
前を向いて相手に恐れられる選手にならないといけない――。勝負を決められる選手にならないといけない――。試合に出場できる喜びを噛み締めながら、紫色の“ジャガー”は明るい未来に向かってひた走る。
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)
【J1 PHOTOハイライト】1stステージ・11節
【J1採点&寸評】1stステージ・11節|全9試合の評価をチェック!
スコアは0-0。求められているのはゴールだ――自分がやるべきことははっきりしていた。「いつも通りのプレーをして来い」と指揮官に送り出された背番号29は、「どんどん裏を狙ってやろう。自分がゴールを取って、試合を決めてやる」と自ら闘争心のスイッチを入れた。しかし……。
直後の60分に先制点を許すと、G大阪に守りを固められ、裏のスペースを消されてしまう。68分、浅野はインターセプトからショートカウンターを仕掛けるも、相手CBの金正也をかわしたところでボールを奪われ、1対1を仕掛けた71分にはカバーに来た今野泰幸に行く手を阻まれる。そして80分以降には、ボールを引き出すことさえできなかった。
「今日は2枚目のディフェンダーに止められてしまった。足もとでボールを受けた時にターンして仕掛けられる場面もあったけど、(1枚目の)奥まで見られるようにならないとトップレベルでは通用しない。自分はまだまだ未熟だなと感じました」
試合後、浅野は自らのプレーをそう振り返った。
冷静に課題を分析できた理由は、参考にしていると公言する宇佐美貴史のプレーを目の当たりにしたからでもあるだろう。G大阪のエースは自ら得点を奪えないまでも、ドリブル突破→シュートの形を匂わせて周りの選手を上手く使い、時にはギアを上げてDFの間を突き破った。この日、唯一のゴールが生まれたシーンも、宇佐美がドリブルを仕掛けて得たFKが起点になっている。
「宇佐美選手はドリブル時のボールの持ち方、スピード・身体の使い方が上手い。自分も負けてないというのを見せたかったですけど、今日はそれができなかった。仕掛ける姿勢は大事にしつつも、周りをしっかり見て、自分の中で最良の判断をしないといけないし、チームメイトが僕に求めているのはスピードが活きるプレーだと分かっているので、味方とのコンビネーションを向上させていかないといけない」(浅野)
試合前に思い描いた「結果を残して、気持ち良く日本代表候補合宿に臨む」青写真は叶わなかった。それでも、浅野にとって「特別なもの」であるA代表に一歩でも近づくためには、下を向いている暇はない。
招集の電話がかかって来た時には「緊張して心臓バクバク(苦笑)」だったというが、日が経つにつれて、緊張は“野心”へと変わっている。
「ダメもとでガムシャラに頑張りたいし、今はやってやろうという気持ちでいっぱいです。(宇佐美選手とも)代表合宿で一緒にやった時に、自分の力を100パーセント出して、少しでも良いところを見せつければいいかなと」
前を向いて相手に恐れられる選手にならないといけない――。勝負を決められる選手にならないといけない――。試合に出場できる喜びを噛み締めながら、紫色の“ジャガー”は明るい未来に向かってひた走る。
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)