「どこからでも得点できるし、誰からも守備ができている」。その言葉が今の浦和を象徴する。
ようやく止みそうかと思った矢先、意地悪く再び雨脚を強め、時に視界さえも遮る。
そんな折からの霧雨が舞う曇天を切り裂き、ベアスタで眩い光を放ったのは、サポーターから「浦和の太陽」と呼ばれる男、柏木陽介だった。
59分、ゴール前にハイボールを鋭く蹴り込んだ柏木が、躊躇せずペナルティエリア内へ走り込む。そのパスを高い打点で李が合わせると、ボールは鳥栖DFの頭を越えてファーサイドへ。クリアしようと慌てて飛び出したGK林に、柏木は一歩早く競り勝ちヘディングシュートを放つ。
ゴールはゆっくりと重みのある軌道を描き、鳥栖のゴールネットを確実に揺らす。スコアは2-1に。浦和がついに逆転に成功したのだ。
柏木はホッとした表情を浮かべ、素直に今季初ゴールを喜んだ。
「久しぶりのゴールで、嬉しかった(笑)。それに綺麗な形から決められたからね。ボランチから前線にボールを当てて、前へ出ていって、チュンくん(李)から良いボールが返ってきて。二度のワンツーを絡めて崩せた」
ボランチの位置からチーム全体を見ていて、「前半は中央のエリアを使ってつなぐことを怖がり過ぎていて、悪い雰囲気のなかで失点し、相手に退場者が出たけれども、そのまま(45分間が)終わってしまった」と感じていた。案の定、ハーフタイムにはペトロヴィッチ監督から今季最も大きな怒りが飛んだという。
ただ柏木は「もちろん監督としては、怒らないといけないような内容だったと思う。でも僕らは慌てていなかった。『1点は取れる』、『大丈夫』と声を掛け合った」と、あくまで冷静だったと振り返る。
そして浦和には珍しくロングボールが目立った前半から一転し、後半は浦和の「武器」であるポゼッションに改めてこだわった。しっかりパスを回しながらコンパクトな陣形を保って、ボールが相手に渡ったらすぐプレッシングをかけて自由を与えない。再びボールを奪えば、また高い位置からいつでも仕掛けられるように、ピッチを広く使ってパスをつなぐ。
柏木も「今日は前の人(シャドー)と近い位置でプレーしながら、追い越すプレーを意識していた」。すると狙いどおり、後半開始早々に阿部のミドルのこぼれ球を武藤がねじ込み1-1の同点に。これで「イケイケになった」(柏木)という浦和が畳み掛け、12分後、柏木の逆転ゴールが決まったのだ。この1点は退場者を出していた鳥栖に大きなダメージを与え、その後のゴールラッシュの端緒となった。
2年前は大敗を喫し、昨季は土壇場に追い付かれるなど、浦和にとって、このベアスタはタイトル獲得への「鬼門」として立ちはだかってきた。しかし今回は、数的優位な状況であったとはいえ、2年ぶりの6ゴールに、エース豊田をシュート0本に抑えるなど、途中出場を含む全員がしっかり噛み合って快勝劇を飾った。
「どこからでも得点できるし、誰からも守備ができている」
柏木のその言葉が、今の浦和を象徴している。
ライバルの広島とG大阪が引き分けるなど2位以下とさらに勝点を広げ、第1ステージの優勝はぐっと近づいた。とはいえ、浮かれた様子は一切ない。
柏木は言う。
「もちろん獲りたい。でも欲しいのは年間を通したタイトル。それに『優勝を目指している』というより、今は一つひとつ大事に戦ってやりたいサッカーを追求していくことが、なにより大切だと思っている」
その点で言えば、今季はサイドからの崩しが目立っていたなか、浦和が昨季まで特長としていた中央を切り崩すパスワークから柏木の今季初ゴールが生まれたことは、なにより大きな収穫と言える。
「サッカー少年に戻ったようにプレーできた」
柏木がなにかを取り戻したかのような笑みをこぼした。
試合が終わる頃には雨はすっかり止み、ベアスタとその周辺には、熱をおさめるのにはちょうど良い、清々しい初夏の風が吹いていた。
そんな折からの霧雨が舞う曇天を切り裂き、ベアスタで眩い光を放ったのは、サポーターから「浦和の太陽」と呼ばれる男、柏木陽介だった。
59分、ゴール前にハイボールを鋭く蹴り込んだ柏木が、躊躇せずペナルティエリア内へ走り込む。そのパスを高い打点で李が合わせると、ボールは鳥栖DFの頭を越えてファーサイドへ。クリアしようと慌てて飛び出したGK林に、柏木は一歩早く競り勝ちヘディングシュートを放つ。
ゴールはゆっくりと重みのある軌道を描き、鳥栖のゴールネットを確実に揺らす。スコアは2-1に。浦和がついに逆転に成功したのだ。
柏木はホッとした表情を浮かべ、素直に今季初ゴールを喜んだ。
「久しぶりのゴールで、嬉しかった(笑)。それに綺麗な形から決められたからね。ボランチから前線にボールを当てて、前へ出ていって、チュンくん(李)から良いボールが返ってきて。二度のワンツーを絡めて崩せた」
ボランチの位置からチーム全体を見ていて、「前半は中央のエリアを使ってつなぐことを怖がり過ぎていて、悪い雰囲気のなかで失点し、相手に退場者が出たけれども、そのまま(45分間が)終わってしまった」と感じていた。案の定、ハーフタイムにはペトロヴィッチ監督から今季最も大きな怒りが飛んだという。
ただ柏木は「もちろん監督としては、怒らないといけないような内容だったと思う。でも僕らは慌てていなかった。『1点は取れる』、『大丈夫』と声を掛け合った」と、あくまで冷静だったと振り返る。
そして浦和には珍しくロングボールが目立った前半から一転し、後半は浦和の「武器」であるポゼッションに改めてこだわった。しっかりパスを回しながらコンパクトな陣形を保って、ボールが相手に渡ったらすぐプレッシングをかけて自由を与えない。再びボールを奪えば、また高い位置からいつでも仕掛けられるように、ピッチを広く使ってパスをつなぐ。
柏木も「今日は前の人(シャドー)と近い位置でプレーしながら、追い越すプレーを意識していた」。すると狙いどおり、後半開始早々に阿部のミドルのこぼれ球を武藤がねじ込み1-1の同点に。これで「イケイケになった」(柏木)という浦和が畳み掛け、12分後、柏木の逆転ゴールが決まったのだ。この1点は退場者を出していた鳥栖に大きなダメージを与え、その後のゴールラッシュの端緒となった。
2年前は大敗を喫し、昨季は土壇場に追い付かれるなど、浦和にとって、このベアスタはタイトル獲得への「鬼門」として立ちはだかってきた。しかし今回は、数的優位な状況であったとはいえ、2年ぶりの6ゴールに、エース豊田をシュート0本に抑えるなど、途中出場を含む全員がしっかり噛み合って快勝劇を飾った。
「どこからでも得点できるし、誰からも守備ができている」
柏木のその言葉が、今の浦和を象徴している。
ライバルの広島とG大阪が引き分けるなど2位以下とさらに勝点を広げ、第1ステージの優勝はぐっと近づいた。とはいえ、浮かれた様子は一切ない。
柏木は言う。
「もちろん獲りたい。でも欲しいのは年間を通したタイトル。それに『優勝を目指している』というより、今は一つひとつ大事に戦ってやりたいサッカーを追求していくことが、なにより大切だと思っている」
その点で言えば、今季はサイドからの崩しが目立っていたなか、浦和が昨季まで特長としていた中央を切り崩すパスワークから柏木の今季初ゴールが生まれたことは、なにより大きな収穫と言える。
「サッカー少年に戻ったようにプレーできた」
柏木がなにかを取り戻したかのような笑みをこぼした。
試合が終わる頃には雨はすっかり止み、ベアスタとその周辺には、熱をおさめるのにはちょうど良い、清々しい初夏の風が吹いていた。