「南米の日本」は日本が一蹴されたウルグアイにどう挑むか!?
チリを舞台に繰り広げられるコパ・アメリカは、間もなく決勝トーナメントが始まる。
チリに来て、もう2週間以上が経つ私の目に、とても興味深いことが見えてきた。それはチリが、南米における日本のような国だということ。
チリと日本には、数多くの共通点が存在する。
地震が多く、津波や火山といった災害に頻繁に見舞われる。このことはチリ人との会話でも、よく話題になる。
人々は南米のなかではシャイで親切で、とても落ち着いている。
赤信号で通りを横断する人は南米のなかではかなり少なく、夜道を歩いていても危険はほとんど感じない。
地下鉄に「押し屋」がいる。これは本数が少なく、車内が狭いためだが、日本にしかいないと思っていた「押し屋」にサンティアゴで出会えるとは思っていなかった。
チリの人々と話していて、「そういえばチリ人と日本人は似ているんだねえ」なんて意気投合することが何度かあった。
なぜ、似ているのか。これは次のような理由が考えられる。
日本が四方を海で守られているように、チリは東が海で、西は険峻なアンデス山脈によって守られている。そのため、チリ人だけでしっかりまとまることができているというのだ。
ボリビアとメキシコの試合で出会った大学生は、チリのスペイン語は他国よりも捲し立てるように速くて、独特のものがあると教えてくれた。彼が言うには、それはアンデスの影響だという。
こういう話を聞いて、腑に落ちるところがあった。
私はチリのグループリーグ3試合を全てスタジアム観戦したが、試合を重ねるにつれて、チリが南米のなかでも独特のプレースタイルを持っていることが分かってきた。それが、日本に似ているということも。
チリの特徴は、選手たちは小柄ですばしこく、小技が効き、とても組織的で戦術的だということ。そして、とてもよく走る――。
これらは全て、日本に当てはまる。当てはまらないのは、ビダルのようなとんでもないスキャンダルを起こす選手がいないことくらいだろう。
その日本に似ているチリが明日、ウルグアイとの大一番を戦う。日本代表はウルグアイにまったく歯が立たないが、「南米の日本」であるチリは果たしてどう戦うのだろう。
そんな視点で見ると、チリ対ウルグアイは面白いかもしれない。
最後にビダルのその後について。
事故についての報道は、もうほとんど見聞きしなくなった。全てはチリが負けてから始まるのかもしれないが、街角はもう事故のことなど忘れたかのような空気が漂っている。
誰もがチリの優勝を夢見ていて、そのためにもっとも重要な選手としてビダルは考えられている。新聞各紙のアンケートでも、そうした結果が出ていた。ビダルが期待を集めるのは、チリでは数少ない爆発力を秘めた男だから、そして不死身だからであろうか……。
現地取材・文:熊崎 敬
くまざき・たかし/1971年生まれ、岐阜県出身。週刊サッカーダイジェスト誌記者からフリーランスに転身。国内外のサッカーに精通し、さまざまな媒体で健筆を振るう。徹底した現場主義者で、取材先ではファンに交じってその息遣いを感じ取る、臨場感あふれる筆致に定評。サッカー以外の分野でも活躍する。
チリに来て、もう2週間以上が経つ私の目に、とても興味深いことが見えてきた。それはチリが、南米における日本のような国だということ。
チリと日本には、数多くの共通点が存在する。
地震が多く、津波や火山といった災害に頻繁に見舞われる。このことはチリ人との会話でも、よく話題になる。
人々は南米のなかではシャイで親切で、とても落ち着いている。
赤信号で通りを横断する人は南米のなかではかなり少なく、夜道を歩いていても危険はほとんど感じない。
地下鉄に「押し屋」がいる。これは本数が少なく、車内が狭いためだが、日本にしかいないと思っていた「押し屋」にサンティアゴで出会えるとは思っていなかった。
チリの人々と話していて、「そういえばチリ人と日本人は似ているんだねえ」なんて意気投合することが何度かあった。
なぜ、似ているのか。これは次のような理由が考えられる。
日本が四方を海で守られているように、チリは東が海で、西は険峻なアンデス山脈によって守られている。そのため、チリ人だけでしっかりまとまることができているというのだ。
ボリビアとメキシコの試合で出会った大学生は、チリのスペイン語は他国よりも捲し立てるように速くて、独特のものがあると教えてくれた。彼が言うには、それはアンデスの影響だという。
こういう話を聞いて、腑に落ちるところがあった。
私はチリのグループリーグ3試合を全てスタジアム観戦したが、試合を重ねるにつれて、チリが南米のなかでも独特のプレースタイルを持っていることが分かってきた。それが、日本に似ているということも。
チリの特徴は、選手たちは小柄ですばしこく、小技が効き、とても組織的で戦術的だということ。そして、とてもよく走る――。
これらは全て、日本に当てはまる。当てはまらないのは、ビダルのようなとんでもないスキャンダルを起こす選手がいないことくらいだろう。
その日本に似ているチリが明日、ウルグアイとの大一番を戦う。日本代表はウルグアイにまったく歯が立たないが、「南米の日本」であるチリは果たしてどう戦うのだろう。
そんな視点で見ると、チリ対ウルグアイは面白いかもしれない。
最後にビダルのその後について。
事故についての報道は、もうほとんど見聞きしなくなった。全てはチリが負けてから始まるのかもしれないが、街角はもう事故のことなど忘れたかのような空気が漂っている。
誰もがチリの優勝を夢見ていて、そのためにもっとも重要な選手としてビダルは考えられている。新聞各紙のアンケートでも、そうした結果が出ていた。ビダルが期待を集めるのは、チリでは数少ない爆発力を秘めた男だから、そして不死身だからであろうか……。
現地取材・文:熊崎 敬
くまざき・たかし/1971年生まれ、岐阜県出身。週刊サッカーダイジェスト誌記者からフリーランスに転身。国内外のサッカーに精通し、さまざまな媒体で健筆を振るう。徹底した現場主義者で、取材先ではファンに交じってその息遣いを感じ取る、臨場感あふれる筆致に定評。サッカー以外の分野でも活躍する。