【鳥栖】かつての同僚との攻防戦。富山貴光がPKのキッカーとして示した成長の証

カテゴリ:Jリーグ

古田土恵介(サッカーダイジェスト)

2016年09月27日

笛が鳴る。蹴る。飛ぶ。たったこれだけの動作のなかに、濃密な時間が凝縮されていた。

 笛が鳴る。蹴る。飛ぶ。たったこれだけの動作のなかに、お互いを知っているからこその、同じ空間で汗を流したからこその濃密な時間が凝縮されていた。
 
 そして、その努力を間近で見ていたからこそ、塩田は悔しさとともに富山へ「完敗だった」という賛辞を送ったのだ。
 
 試合後、富山は大宮サポーターの元へと挨拶に訪れた。不調に陥っても、ピッチに立てば、声援でエネルギーをくれた人たちへの、どうしてもしたかった義理通しだった。
 
「いろいろな想いがあった1戦だった。選手紹介の際に大きな拍手をもらって、温かく迎えられたことはすごく嬉しかったし、試合後の声援もそう。本当に多くの感情が入り混じるような戦いで、そのなかで少しでも成長した姿を見せられたかな」
 
 試合後にその瞳に光ったものは、ある意味で大宮への惜別を表わしていた。富山はもう、鳥栖の人間なのだから。
 
 誠実で、何事にも全力で、どんな時も労を惜しまない。そんな青年は別れを経て、またひとつ大きくなった。
 
 そしてきっと、その力を鳥栖でも発揮し続けてくれるはず。今度は佐賀の地で、みんなから好かれる選手となるのだろう。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
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