【選手権出場校】群馬・前橋育英|どん底から這い上がったタイガーブラック軍団

カテゴリ:高校・ユース・その他

安藤隆人

2016年11月06日

2か月後、彼らはどんな色彩を放つのか

同点劇からわずか5分後、前橋育英はCKからDF渡邊⑮が豪快ヘッドで逆転弾を叩き込んだ。写真:安藤隆人

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 後半、ベンチがまず動く。準決勝で負傷し、先発から外れていた大塚を頭から起用したのだ。「負けていた状態だったので、監督に直談判しました」と、キャプテンの熱意に山田監督が押されての交代だった。
 
 この英断が見事に奏功する。「大塚が入ってタメができた。自分の欲しいところにボールをくれる」と、前半は若干消えていた左MF高沢颯(3年)が、後半になると得意のドリブルで何度も前橋商の守備ブロックを切り裂き、チームの起爆剤となった。
 
「颯は打開できるので、裏というより、足下に積極的にボールを出せばリズムが生まれると思った。周りもそれに上手く反応してくれた」とは大塚。彼と高沢のホットラインを軸に、FW飯島陸(2年)、右MF田部井涼(2年)、ボランチの長澤昂輝(3年)らが積極的に前橋商の守備ブロックの間に走り込み、ボールを引き出した。さらに渡邊泰基(2年)と後藤田亘輝(2年)の両サイドバックも果敢にサイドを駆け上がり、全方位からの多彩な崩しで、堅守を誇る前橋商ディフェンス陣をかく乱した。
 
 63分に渡邊のフィードを受けた飯島が鮮やかにDFの間隙を破って同点ゴールを叩き込むと、その5分後には交代出場のMF田部井悠(1年)が思い切りのいいシュートを放ち、GKに防がれたものの、ここで得たCKから逆転弾が生まれた。高沢の放ったキックを、ファーサイドで田部井悠がエンドラインぎりぎりの位置から頭で中に返すと、これを渡邊がドンピシャヘッドで合わせた。
 
 その後も相手にチャンスを与えずに攻め続け、2-1の逆転勝利。「本当に苦戦の連続だった。しんどい県予選だった」と山田監督が安堵の表情を浮かべたように、最後まで苦しい展開だったが、組織力で勝ち抜いて出場権を掴んだ。
 
「点は入らなくても焦れずにやろうと。組織で戦う意識が強い」(大塚)
 
 上州のタイガーブラック軍団は強烈な個というパズルのピースを、バラバラな状態から自分たちの力で組み合わせ、いま、冬に向けてそれを完成形に近づけようとしている。はたして2か月後、彼らはどんな色彩を放つのか。早くも選手権本番が楽しみだ。
 
 
取材・文:安藤隆人
 
 
 
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