選手たちは自らが赤いユニホームにふさわしい男であることを証明した。
4戦目にして、浦和がようやく公式戦初勝利を飾った。
激しい風雨に見舞われた敵地BMWスタジアムが、勝利の凱歌に包まれる。その光景を見た私は、「3日前の敗北」は無駄ではなかったと思った。3日前の敗北というのは、説明するまでもない。退場者を出して0-1で敗れた、ブリスベンとのACLのことだ。
試合後、埼玉スタジアムは大ブーイングに包まれ、阿部がゴール裏のサポーターに向かって懸命に訴えていた。あれほど鬼気迫る表情をしたキャプテンを、私は見たことがない。
その晩、私は考えていた。あの熱い言葉の応酬を言い表すには、どんな言葉がいいだろう――。舌戦でもないし、激論でもない。口論や言い争いというのも違う。
「結果を出してくれよ、勝ってくれよ」というサポーターの言葉に、阿部は「次はやる」と叫んだ。いまにして思えば、あれは約束だった。
中2日という厳しい日程、もう負けられないという重圧の中で、選手たちは自らが赤いユニホームにふさわしい男であることを証明した。森脇が与えたPKから先制されたが、後半は地力の違いを見せつけ、湘南という勇猛果敢なチャレンジャーを退けた。
ブリスベン戦の敗戦で、チームとサポーターの関係に亀裂が走った。監督や選手から「ブーイングはない」という言葉が上がり、サポーターからは「甘えている」と声も出た。私も、この連載で思ったことを思ったまま書いた。
3連敗を喫して揉める。これはむしろ健全なことだと思う。選手と監督、サポーターが、いつも一枚岩というのは考えられないことだ。負けても「感動をありがとう」と祝福されるチームには、未来がない。それは本物の家族ではないだろう。
浦和というチームは、昔から何かと揉めるチームだった。それは勝利を渇望し、敗北を拒絶する強い気持ちを持つサポーターと選手たちがいたからだ。湘南戦の勝利は、その文化がいまも受け継がれていることを証明するものだった。
振り返ればアジアを制した2007年のチームには、ワシントン、闘莉王、長谷部といった勝利に執着する男たちが揃っていた。だが、彼らはもういない。チームは月日の流れとともに変わっていく。
だが勝利に飢えた熱い血潮は、いまも浦和に流れている。それはいまでも、勝利を求めて叫び続けるサポーターたちがいるからだ。彼らが背後で懸命に叫び続けることで、選手たちは浦和の男になっていく。チームとサポーターは本気でぶつかり合いながら、ひとつの家族になっていく。
取材・文:熊崎敬
激しい風雨に見舞われた敵地BMWスタジアムが、勝利の凱歌に包まれる。その光景を見た私は、「3日前の敗北」は無駄ではなかったと思った。3日前の敗北というのは、説明するまでもない。退場者を出して0-1で敗れた、ブリスベンとのACLのことだ。
試合後、埼玉スタジアムは大ブーイングに包まれ、阿部がゴール裏のサポーターに向かって懸命に訴えていた。あれほど鬼気迫る表情をしたキャプテンを、私は見たことがない。
その晩、私は考えていた。あの熱い言葉の応酬を言い表すには、どんな言葉がいいだろう――。舌戦でもないし、激論でもない。口論や言い争いというのも違う。
「結果を出してくれよ、勝ってくれよ」というサポーターの言葉に、阿部は「次はやる」と叫んだ。いまにして思えば、あれは約束だった。
中2日という厳しい日程、もう負けられないという重圧の中で、選手たちは自らが赤いユニホームにふさわしい男であることを証明した。森脇が与えたPKから先制されたが、後半は地力の違いを見せつけ、湘南という勇猛果敢なチャレンジャーを退けた。
ブリスベン戦の敗戦で、チームとサポーターの関係に亀裂が走った。監督や選手から「ブーイングはない」という言葉が上がり、サポーターからは「甘えている」と声も出た。私も、この連載で思ったことを思ったまま書いた。
3連敗を喫して揉める。これはむしろ健全なことだと思う。選手と監督、サポーターが、いつも一枚岩というのは考えられないことだ。負けても「感動をありがとう」と祝福されるチームには、未来がない。それは本物の家族ではないだろう。
浦和というチームは、昔から何かと揉めるチームだった。それは勝利を渇望し、敗北を拒絶する強い気持ちを持つサポーターと選手たちがいたからだ。湘南戦の勝利は、その文化がいまも受け継がれていることを証明するものだった。
振り返ればアジアを制した2007年のチームには、ワシントン、闘莉王、長谷部といった勝利に執着する男たちが揃っていた。だが、彼らはもういない。チームは月日の流れとともに変わっていく。
だが勝利に飢えた熱い血潮は、いまも浦和に流れている。それはいまでも、勝利を求めて叫び続けるサポーターたちがいるからだ。彼らが背後で懸命に叫び続けることで、選手たちは浦和の男になっていく。チームとサポーターは本気でぶつかり合いながら、ひとつの家族になっていく。
取材・文:熊崎敬